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本は好きだが読書が苦手な男の読書ブログ。時々映画もあるよ。

40代のオッサンが初めて【三島由紀夫の金閣寺】を読む!

三島由紀夫
誰でも一度は聞いたことはある作家だろう。
国語の時間に習ったかもしれないが、勉強嫌いだったし、そもそも小説の類は学生の頃は殆ど読んだ記憶がない。

とはいえ、昔書店勤めをしていたので名前は何度も目にしているし、そもそも有名な作家なのだ。三島由紀夫といえば、なにやら活動家のイメージがあり、自害したということくらいしか知らない。そして、実は生まれてこの方一度も読んだ記憶が無い。

まずは名作といわれる作品を読んでみようと購入した本は「金閣寺」だった。

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 こんな名作だけど、ネットのレビューは一切見ておらず、この記事を書くにあたって全く他のレビューは見ていない。

したがって、純粋な感想を書いて述べるとする。

ここ最近いくつか文学作品や小説を読んだが、三島由紀夫の文章は特別に美しい。素人の僕が読んでもズバ抜けて表現が卓越していると思える。

例えば、

遠近法を誇張した絵のように、金閣寺は居丈高に、少しのけぞっているような感じを与えた。

波紋は水面の藻を押してひろがり、忽ちにして、美しい精緻な建築は崩れ去った。

ほんの瞬間の衝突によって接触して、彼の生は彼の死と化合したのだった。

 ストーリーは金閣寺鹿苑寺)の修行僧(学僧)が、ある時、美しい金閣寺に火をつける事を決意し、その目的に向かって進む日々が綴られている。

吃音を持っている主人公と同じ学僧の友人鶴川、内翻足(ないほんそく)という障碍をもっている学校の友人で遊びを知っている柏木。金閣寺の師匠の裏の姿など、クセのある登場人物との人間模様と同時に計画を遂行するまでの話。

古い話で知らなかったが、実際に金閣寺の放火事件は1950年にあったらしい。この事件をもとに書かれたものだが、本当に犯人が書いた精密な描写は三島自身なのではないかと疑うほどのリアリティを感じた。
金閣寺を美しいと感じながらも消したい思い。そして自己をも消したいと思う心。そんな心の核心を追って行く、読み応えのある一冊だった。

 

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)