燃えよ剣(司馬遼太郎)
読み終わるのに約2週間かかったが、その期間、土方歳三と過ごしたような気分になった。これもゆっくり読む醍醐味だろうか。
読んでいる最中に、NHK大河ドラマ「新選組!」(三谷幸喜脚本、2006年)のテーマ曲が頭の中に何度も流れた。それもそのはずで僕が新選組と言って思い出すのはこのドラマぐらいだ。
近藤勇や土方歳三など多摩から集まった若い浪士たちを中心に幕府の警護のために薩摩、長州、土佐などの討幕派を相手に戦うが、最後には錦旗を薩長に取られてしまい幕府が賊軍となるという悲劇が待っていた。正義の話が最後には立場が変わってしまうという時代の大転換期だから起きた事だろう。
この本を原作とした映画が上映されるということで、一度読んでみようと購入したのが一年前。しかし上巻を途中まで読んだところで止まったままになってしまい、映画のほうも新型コロナウイルスの影響で延期になった(これを書いている現在では2021年10月上映予定)。
今年に入り、いろいろと本を読むようになり、本棚で寝ていたこの「燃えよ剣」を久々に手に取り、もう一度初めから読んだ。
「土方歳三」は深かった。
百姓の子の「バラガキ」(乱暴者)と言われた歳三は、生来の喧嘩師でありながら、歪んだことが嫌いな武士道精神を貫いた男だ。
近藤勇や沖田総司などの盟友との深い親交がある一方、好き嫌いが激しい性格は敵も作る。特に厳しすぎる掟に怖れる隊士も多かった。
しかしポリシーを強く持ち、最後まで降伏はせず戦い続けて散っていく姿は美しくも見えるが、近藤勇や沖田総司を思いながら描かれる最後は切ない。
また、人には見せない恋や情事も彼らしいといえば彼らしいのかもしれない。演出がどこまであるのかわからないが、生き様が格好良い。
ちょっと性格の悪い描写で僕に似ているところがあったので変な意味でシンパシーを感じるところもあったが・・・
激動の幕末はあらゆる角度で見ることができるが、強い組織を作るために生き、剣に生き、喧嘩に生きた実直明快で硬派な男を味わえる。
読んでいるうちに夢中になってしまったせいか、この「燃えよ剣」が映画化されることを忘れていた。今上映していたらすぐに見に行っていたかもしれない。上映が楽しみだ。
司馬遼太郎の作品を読むのははたぶん2作目。初めて読んだのはこれも幕末もので長州の吉田松陰や高杉晋作などの物語「世に棲む日日」だった。
これもまた読んでみたい作品。