本がある日日

本は好きだが読書が苦手な男の読書ブログ。時々映画もあるよ。

コロナの暗号(村上和雄)

新型コロナ、自然災害、環境問題、平和と戦争など、遺伝子研究で有名な村上和雄さんの最新刊。
ただし、残念ながら村上さんは今年4月に亡くなられたので本書が遺作となった。
コロナだけでなく人類は今後どう生きていけばいいのかを提言されている。

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 過去に書かれた本と重複する内容も多い気がするが、気になったポイントをまとめてみた。

・私たちの「もっともっと」が人類の未来を滅亡させる
・人間の37兆の細胞は争わないが、77憶の人類は争い続ける
・優れた科学法則の発見も、もともと自然界にあったものを見つけたにすぎない
・人間は生まれてきただけでも偉業、生きているだけでも奇跡
・人の心の奥深くにあって、「意識」をはるかに超えた存在である「魂」を大事にすることが、これからの人間の重要な課題
・「死ぬ」ということは、生命の器を自然に返すこと。やがて次の生命の器となって蘇る。(物質レベルでの輪廻転生)
・遺伝子は助け合って、利他的に活動している。もし利己的な行動ばかりでは、生物は生存できない
・コロナ禍、大災害と、多くの痛みが人類を襲い地球の危機が叫ばれはじめているいまこそ、利他的生き方をしてきた日本の出番

最後に著者は「コロナ」の暗号に隠された人類生存の知恵として、「サイエンス(科学)」「スピリチュアリティ霊性)」「サスティナビリティ(持続可能性)」の3つの考えを提唱されている。
これまでサイエンス以外はあまり重要視されてこなかったが、こえからはこの3つが社会システムの基盤になることが必要だと言う。

そして最後に「つつしむ力」を提唱されている。
物への執着をなくし、互いに助け合って暮らす「つつしみ」こそが新しい文明像とライフスタイルのキーワードになる。
謙虚でつつしみ深い態度があれば、科学と技術は人間の心の成長に見合った形で適正に進歩し、持続可能な共存社会を作るために役立つという。

最後のメッセージをそのまま引用します。

この「つつしむ力」こそが、「コロナ」が暗示するメッセージであり、度重なる異常気象、大災害はもちろん、新たに危惧される地球の危機状況から私たち人類読み取るべき重要な教訓なのではないでしょうか。


長い人類の歴史から見れば、ここ200年ぐらいで大きく文明は発展し、幾度の大戦も経験し、20世紀後半から環境問題も提起されてきた。
核問題は解決していないが、核抑止力という効果はあれども平和になったわけではない。環境問題も世界レベルでゆっくりながら進んでいるが決してこのままで良いはずはない。

個人的にはやはり「経済」が問題だと思っている。
「つつしむ力」が身に付けば経済問題は解決するのだろうか。「つつしむ」ことで経済は明らかに減速し停滞する。そうなっても皆が平和で生きていけるシステムこそが重要なのでないだろうか。そうすれば、本当の平和は近い気がする。

 

・2021年7月発行
幻冬舎