本がある日日

本は好きだが読書が苦手な男の読書ブログ。時々映画もあるよ。

少年時代(藤子不二雄A)

いつか読みたいと思っていた藤子不二雄Aの作品をようやく読むことができた。
もとの連載は昭和53年から一年間、週刊少年マガジンで連載されたもの。
この愛蔵版は1989年に同名の実写映画は公開される前に発売されたもののようだ。

舞台は戦時中の田舎での少年にまつわる話。少々重い雰囲気のストーリーではあるが、少年の心理描写が上手く、実に面白かった。

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いつの時代もこうなのかと思う当たることが多々あり、記憶が呼び起こされてしまった。

昭和19年、主人公進一はは小学5年生で東京から富山に疎開することになるが、通うことになる学校の同じクラスには、勉強もできるがとにかくケンカが強い番長タイプでもあるタケシが学年、いや学校中を力まかせに支配していた。

主人公の進一はどちらかというと大人しいタイプだが、自分の信念は持ってはいる。しかし、タケシの横暴ぶりに本心を話せなかったり、またそんな自分が嫌になったりするのだった。
タケシは、東京から来た進一を思いやる一面もあるが我儘にふるまうこともある。また、タケシは男気もあるが、支配欲が強い。
しかし、いつもそんなふうなので、いつもはタケシの言う事を聞く仲間達からもひそかに嫌われていた。
そんな微妙な人間模様が約一年を通して描かれている。

僕個人のこのような少年時代は、この時代と世代も違うし、もちろん戦争とも無縁だった。(過ごした地域も現在とはまったく違う場所だった)しかし、この力の強いものが支配する世界は存在していた。中途半端に強い人間が、人の上に立つこともあれば、途端にいじめられる側になる事もあった。
すっかり忘れていたが、ある意味陰湿な人間関係があったことを思い出した。(当時はそんなふうに感じていなかったと思うが)

世代や地域も全然違うのに同じようなことがあるのだと感じ、人間の性質としてこういう根っこはあるのだなと感じた。

人間形成については親や家庭は重要だが、今思うと学校の環境も大きく影響されるのではないかと思う。

本当にすっかり忘れていることをいろいろと思い出させてくれた一冊だった。最近会った人の名前もすぐ忘れてしまうが、小学生低学年にしか関係してなかった友人の名前が突然思い出したり・・・

この本にあるように、僕も少年時代を過ごした場所へ戻るときは来るのだろうか。行ってみたい気もするし、そうでもない気持ちもある。


ちなみにこの作品は著者の自伝ではなく、柏原兵三氏の「長い道」をもとに書かれた漫画です。

 

ちなみに映画化された作品はこちら。
映画の主題歌は井上陽水のあの「少年時代」です。
たしか、歌詞を藤子不二雄A氏が書き、曲を井上陽水氏に頼んだところ、ダメ出しされ、井上陽水氏が全部書き直したと藤子不二雄A氏の著著に書いていましたね(笑)