本がある日日

本は好きだが読書が苦手な男の読書ブログ。時々映画もあるよ。

脳とうつ(鬱)の関係 「ストレス脳」(アンデシュ・ハンセン)

以前ベストセラーになった「スマホ脳」の著者アンデシュ・ハンセン氏の本「ストレス脳」を読みました。

スマホ脳」は以前読んで為になりました。その後の作品はあまり関心はなかったのですが、先日某ラジオ番組で同じアンデシュ・ハンセン氏の「運動脳」という本と合わせてこの本も紹介されていて、“うつと運動”の関係を書いているとのことで面白そうなのでまずはこの本を読んでみることにしました。

そもそも今現在あまり“うつ”に関してそこまで関心はないのですが、やっぱりストレスとか不安とかは日常生活にはあるわけで、どのように「運動」と関連性をもって書かれているのかという興味はありました。

著者はスウェーデン精神科医で、うつや精神疾患の患者に日々接しています。
現代では病気や飢餓などのリスクを克服し、豊かさと贅沢の中で暮らしているにもかかわらず、うつや不安障害は増加の一方なのか。
研究の結果がこの本にまとめられています。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇
人間という「生物」として考えたとき、遺伝子レベルでは狩猟採集民族の時代から変わっていないということ。

一番の目的は生き延びて子孫を残すためであるということ。

問題はなぜ感情があり、精神状態が変化するようになっているのか。

感情は自分の周囲に起きていることに反応してほとばしるのではなく、脳が内と外の世界で起きていることを融合して作り出す。
その感情をもとにして、脳は私たちに生き延びるための行動を起こさせる。
つまり、生き延びて遺伝子を残せるように、脳が感情を使ってその人を行動させる。

そして残念なことに感情は不安をも呼び寄せる。

しかし、不安に苛まれるのはおかしいことではなく、不安やうつは防御メカニズムである。

脳が強ければストレスや苦難や孤独の影響を受けずにすむのではなく、生きるためにベストを尽くせる。

なぜうつになるのかという疑問に対しては、長時間座っていることで筋肉や脂肪組織の炎症につながる。また、長期的なストレス(も全身の炎症の度合いを高める)など現代のライフスタイルが原因となっている。

脳が「危険にさらされている」と解釈し、感情を使って私たちを引きこもらせる。
感情というのは私たちの行動を制御するために存在する。
(脳の最も重要な任務は生き延びること)

そして対策として、運動でうつのリスクを下げられるということ。

私たちの身体の中で最も中心的なストレスシステムはHPA系と呼ばれ、数週間定期的に運動するうちに、HPA系の活動はゆっくり落ち着いていく。そうすると運動のあとだけではなく、もっと長くその状態が続くようになる。
(※HPA系とは身体と脳にある3つの部分が互いにコミュニケーションをとっているシステム)

長い人類の歴史からみると私たちの祖先は一日に15000歩~18000歩ほど歩いていたとみられる。人類の長い歴史の間に減ってきたのではなく、短期間で減っていて運動状況は劣悪となっている。

調査の結果、毎日じっとしている代わりに15分間ジョギングをするだけで、うつになるリスクが26%減り、1時間散歩をしても同じだけリスクが下がった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇

主にこのような内容が書かれていますが、その他にも孤独が精神にどのように影響するか、うつは宿命(遺伝子)の問題ではなく環境であるということなども書かれています。

最後には「幸せ」についても生物学的にも哲学的にも洞察されています。

感銘を受けた部分を抜粋します。

「生きる意義を一つでももつ者は、いかに生きるかという問いのほとんどに耐えられる」精神科医のヴィクトール・E・フランクル強制収容所でいかに生き延びたかという問いにニーチェの言葉を引用して答えた内容)

何がその「生きる意義」に値するかは人の数だけ答えがあるだろう。しかし一つ確かなことがある。常に楽しい体験をするというのは、その答えには入っていないということだ。だから幸せを追い求めてはいけない。
幸せとは幸せについて考えることをやめ、意義を感じられることに没頭した時に生まれる副産物なのだ。

「幸せについて考えることをやめること」哲学的で良いですね。そんなことを考えているうちは幸せにはならないってことですね。

さて、全般的には人類の歴史から生物学的なところから分析する内容は面白かったです。そもそも人類はどういう生物なのかという切り口です。

それにしても運動とうつが関係しているとは思いませんでしたので面白かったです。
運動は身体の健康だけではなく脳にも影響するんですね。そうして脳をコントロールできるなら取り入れるしかないですね。
確かに運動したあとは精神状態が変わるのはわかります。それを科学的検証したということです。放っておくと怠惰になりますのでもっと生活に運動を取り入れたいと思います。
(この本、たぶんタイトルの付け方がよろしくないのではないかと思いますね。ベストセラーの後で似た書名にしてますが「ストレス脳」ではインパクトがちょっと弱いような)

そして、その延長線上に(応用編?)著者の「運動脳」という本があるんですね。こちらもまた読んでみたいと思います。

 

※過去記事

imglad.hatenablog.com