本がある日日

本は好きだが読書が苦手な男の読書ブログ。時々映画もあるよ。

月と人間の優しい物語「月の立つ林で」(青山美智子)

今年の一冊目はこちら。
青山美智子さんの新作「月の立つ林で」を読みました。

青山美智子さんの作品は優しい雰囲気でありながら生きることや職業、仕事などの深いテーマを背景にもっているストーリーが魅力ですが、今回は特に優しさがあふれてました。

今回も一つのキーワードを基に人間ドラマが綴られる連作小説です。
(装丁デザインがエンボス加工されていたりと凝っていてとても良いです)

「月の立つ林で」というタイトル。わかるようでわからないようなタイトルでしたが最後まで読むとなるほどという意味もあり綺麗なタイトルだと思います。

この作品の中でキーなるのは現代ならではの音声配信コンテンツ「ポッドキャスト」。その中で「月」に関する話を配信している番組「ツキない話」がそれぞれの章で登場します。

 

<以下若干ネタバレあり>


「ツキない話」という番組は必ず、

「竹林からお送りしています。タケトリ・オキナです。かぐや姫は元気かな」

というフレーズから始まります。

この番組が全5章からなるそれぞれの話の主人公は番組を聴いて癒されたり、人生のヒントを得たりします。

長年勤めた元看護師が違う仕事に転職しようと思っているが、あるネット通販での買い物から大切なことを知るきかっけを得る話。

夢を諦められない芸人は、ダメだと思っていた自分の存在が「月」のあることから輝くということを知る話。

かわいい一人娘が自分とは正反対の雰囲気の男と結婚、妊娠し、寂しくそして予定どおりじゃない展開が気に入らない父親が愛情あふれる人に囲まれていることに気づく話。

子供のころに親が離婚し、母と二人で暮らしてきたが母親から嫌われていると思い、早く親から自立したい女子高生が親の心に気づく話。

余計なものは排除して環境を整えることが大切だと思っていた人気アクセサリー作家が本当の良い環境とは何かを気づかされる話。

各章の主人公はバラバラなのですが、毎日配信される「ツキのない話」に惹かれます。そして何かヒントを得ながら一生懸命に生きています。だからこそ共感できることも多いのですが、優しさや真心が足りてないかなとか、ちょっと愚痴や文句が多いかなとか、読みながら自分を省みることも多々ありました。

また「月」に関する蘊蓄(豆知識)もいろいろと出てきて為になります。

今回の作品は途中まで過去の作品よりインパクトは弱いかなと思ったりしましたが、全体的な纏まりが素晴らしく、各章の人物の繋がり方が巧妙で素晴らしいです。
なによりも優しさが突出した作品のように思いました。

最終章はちょっと涙ぐみました・・・(歳のせいでしょうか)

 

最後の章を読みながら思い出したので写真を貼ってみました。
(昨年2022年の1月1日(朔日)の朝に撮影した写真)
どういう意味かは読んでのお楽しみです。

 

 

 

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