スマホ脳(アンデュ・ハンセン著、久山葉子訳)
共感できる人は多そうだ。ついついスマホを見てしまうのには訳があった。
年末に本屋で新潮新書「スマホ脳」(アンデュ・ハンセン著、久山葉子訳)が面白そうだったのでつい買ってしまった。
今や多くの人が当たり前のように手にしているスマートフォン。
囁かれるのは電車の中、駅、車の中、会社、食事中などいつでもどこでもスマホを見ていることに対するマナーの悪さ。
スマホと一言で言っても、個人個人で使用しているアプリが違うので使い方にはバラつきがあると思う。
ネットでニュースを見る人もいれば、SNSを使う人、LINEをする人、ゲームをする人、本(電子書籍)を読む人、Youtubeやテレビなどを見る人などなど。
デジタル文化を少しずつ遡ってみる。
スマホの前のネット環境は「インターネットができる携帯電話」(ガラケー)+PCだった。
その前は「携帯電話(ネット無し)」+PCだったが、コミュニケーションツールとして携帯メールはあった。
記憶ではこのあたり以前はネット環境はPCのみ。PCを持っていない人はネット環境が無い状態だった。
およそ20年~25年ぐらいの間に急激にインターネットが普及し、さらにスマートフォンが普及することでまさに“手のひらに世界が収まる状態”に生活環境が変わった。
この「スマホ脳」の著者はスウェーデンの精神科医だ。
著者はスマホとうつ病や精神病との因果関係を問題視している。
著者の住むスウェーデンではスマホが普及してから、大人の9人に1人が抗うつ剤を服用する状態になっているという。
* * * * * * * * * * * * * * *
なぜこんなことになるのか。
長い人類の歴史の中で現代のようなデジタルの時代はほんのわずかな時間で、進化の見地から見れば一瞬でしかないという。
人間は異なった環境に適応するには時間がかかり、今のような時代に適合できていないので不具合が起きる。
脳内の伝達物質の一つにドーパミンというものがある。
ドーパミンとは私たちを元気にするのではなく、「何に集中するかを選択させること」だ。
進化の過程からみれば、周囲をよりよく知ることで生存の可能性が高まることから人間が知識を渇望するのは普通だ。
その知識や情報を得たいという本能は現在の人間も当然持っている。
新しい情報を渇望するドーパミンが存在する。そして、新しい情報を得ると脳は報酬がもらえるのだ。
新しい情報を得ると脳の報酬システムが、私たちの祖先が新しい場所や環境を見つけたときと同じように作動する。
このシステムがあるから人はスマホに何かを期待してしまい、「なにか新しいものがあるかもしれない」と一日に何度もスマホを見てしまうのだった。
* * * * * * * * * * * * * * *
ここからは僕の自論だが、デジタルツールが現れる前の情報源といえば、新聞、雑誌、テレビなどの媒体で今よりも発信される回数は少ないし、情報が遅い。
それに慣れてしまえば、新聞なら一日一回の情報、週刊誌なら一週間に一回の情報とわかりきっているので、もっともっと欲しいという欲望はそれほど無かったと思う。
それが、今は常にリアルタイムに情報が更新されているので、5分、10分経てば何か新しい情報があるかもしれないと思ってしまうのだった。現に更新されていることがあるとそれが頭の中で繰り返されて次第に中毒性が出てくる。
この本には他にも、デジタル社会における集中力の低下、ストレスやうつの役目(決して悪い面だけではない)、スクリーン(画面)による睡眠障害、子供がスマホやタブレットを使うことのデメリット、などが書かれている。
僕の場合、確かにインターネットを使用しはじめてから、あらゆる人とコミュニケーションをとることができるようになり、無意識に早く求めるようになったように思う。
メールの返信が欲しい、新しい情報が欲しい、早く解決したい・・・
SNSが普及して、それまで以上にスマホ、タブレット、PCの画面を見る時間が長くなった。これでいいのかと後悔や自問することも時々ある。
デジタルデトックスという言葉も聞かれるようになったが、今一度スマホやデジタルツールの関わり方を見直したいと思った。