本がある日日

本は好きだが読書が苦手な男の読書ブログ。時々映画もあるよ。

峠(司馬遼太郎)

幕末大政奉還後、越後長岡藩に攻めてくる新政府軍(官軍)から長岡藩を最後まで守ろうとした武士がいた。

幕末には数々の英雄が生まれて語り継がれているがその中でも何か偉業を成したわけでもないが、強い思想持って生きた無名の武士河井継之助の生涯を描いた長編。

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 読もうと思った動機はこの本の映画化だった。

そもそも2021年6月に役所広司主演で公開される予定だったのでそれまでに読もうと思っていたら昨今の(新型コロナウイルス)事情で延期になってしまった。
というわけで映画の楽しみはおあずけになってしまったわけだ。

さて、司馬遼太郎作品を読むのはおそらくこれで3作目。
初めに書いた通り、主人公の河井継之助は歴史上無名というかマイナーば部類に属する人物だが、時代が幕末という大転換期で全国各地でそれまで想像できなかったことが起こったと思う。

河井継之助は諸外国が日本に次々と来ている状態を見て「幕府は滅びる」と予見していた。
そして尊王攘夷の思想を持っていた。
しかし、長岡藩は徳川に恩があった為、筋を通さねばならぬため最後まで幕府を支持する。

時代は激動し、大政奉還、王政復古、鳥羽伏見の戦い江戸城無血開城などを経て新政府軍は北へ侵略をすすめる中、ついに長岡藩にもその手が近づいてくる中、河井継之助はあくまで中立を保うとする・・・

河井継之助は女郎買いなどの遊びも行うが、儒教朱子学、禅、などの思想持ち信念を持って長岡藩を守ろうと生きる武士の姿が美しい。
自己啓発にもなるような内容も多くて面白く読めた。

また、西郷隆盛(吉之助)、新選組福沢諭吉徳川慶喜山県有朋(狂介)幕末の有名な人物がところどころに現れるのも醍醐味だが、吉田松陰渋沢栄一なども取り上げれられいるのも幕末小説の面白さ。

現在(2021年)の大河ドラマ「青天を衝け」の渋沢栄一も幕末を舞台にしているが、坂本龍馬薩長だけでなく全国的に激動の時代だったと感じた。

あとがきで司馬遼太郎はこう書いている。

人はどう行動すれば美しいか、ということを考えるのが江戸の武士道倫理であろう。人はどう思考し行動すれば公益のためになるかということを考えるのが江戸期の儒教である。この二つが、幕末人をつくりだしている。

サムライという日本語が幕末期からいまなお世界語でありつづけているというのは、かれらが両刀を帯びてチャンバラするからではなく、類型のない美的人間ということで世界がめずらしがあったのであろう。
また明治後のカッコワルイ日本人が、ときに自分のカッコワルサに自己嫌悪をもつとき、かつて同じ日本人がサムライというものをうみだしたことを思いなおして、かろうじて自信を回復しようとするものであろう。
私はこの「峠」においてサムライとはなにかということを考えてみたかった。それを考えることが目的で書いた。

  この作品は昭和41年11月から約一年半の間、毎日新聞に連載。
昭和43年に新潮社より刊行、平成15年に文庫版刊行された。

 

touge-movie.com