本がある日日

本は好きだが読書が苦手な男の読書ブログ。時々映画もあるよ。

シンプルだけど秀逸なタイトルだと思う(夏目漱石・こころ)

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 なぜ今、夏目漱石の「こころ」か?
というか、僕はいまだかつて夏目漱石の本をまともに読んだ記憶が無い。
せいぜい学校の教科書に載っていたとかで何かの作品を読んだ程度で、恥ずかしながら本として読んだのはこれが初めてです。


こゝろ」というタイトル。なんてシンプルなんだと思いますが、読んで納得。善もあれば悪もある恋もあれば、寂しさもある。人のこころを丁寧にゆっくりと紡ぐように描かれた作品。やっぱり「こころ」ですね。

 

こころ (新潮文庫)

こころ (新潮文庫)

  • 作者:夏目 漱石
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/03
  • メディア: 文庫
 

 

どんな話?

(ネタバレ)
(上編)学生である主人公は「先生」(と呼ぶことになる)人と出会い、親しくなり、人生の教訓のようなこと教わる。


(中編)その後、体調を悪くした父親を心配して実家に帰るが、逆に自分の就職先を心配されて、先生に就職先の世話をしてくれないか手紙を出す。しばらく返事がないが、ようやく届いた手紙がとても分厚い手紙だった。
それは先生の過去が詳細に記された遺書だった。


(下編)(ここから先生の話になる)
叔父に騙されたこと、ある軍人の遺族である奥さんのもとで下宿することになり、そのお嬢さんと一緒に暮らすことになり、お嬢さんに恋をする。思いを告げることのないまま、先生は友人のKを呼び、同じ家で下宿することになる。Kもお嬢さんが好きになったことを知らされ、落ち着かない先生は、奥さんにお嬢さんが欲しいと話して承諾を得る。
それを知ったKは自殺する。
お嬢さんと結婚した先生は、Kの事が忘れられない。
先生はずっと心にわだかまりを抱えたままなので様子がおかしいことが時々あり、妻となったお嬢さんは自分が悪いのではないかと思う。しかし、先生は打ち明けられません。
ある時、明治天皇崩御され、その後西南戦争で失敗を犯し、苦悩しながら生きてきた乃木大将(希典)が自殺したことから、明治という時代を終わりを感じ、先生は自殺を決意する。

【感想】
ストーリーはシンプルですが、上で伏線を張って、下で解決する流れもあり面白い。先生にしろ、叔父さんにしろ、誰にでもありそうな「心の姿」が描かれています。
(上)では未来のために今我慢するという寂しさ、疑い、罪悪といいきる恋、人間の性善説性悪説などを教えられ、(下)では先生のKへの裏切り、自殺、明治とういう時代をとらえて書かれています。

先生の自殺という大きな変化球で話は転換するのですが、最後の明治天皇、乃木大将というキーワードは、今の価値観では理解し難いもののように思えます。
「時代」とともに自分を重ねている姿は、武士道の精神、道徳観を考えればわからないでもないです。しかし、一番重要なのは先生が「良い人」であったからこその自殺だったのではないかと思います。

大人になって読んでみるからこそわかる人間の心があります。ですから、この小説を中学生や高校生に理解できるのか疑問に感じますが・・・
社会経験があればこそ感じるものがあるのではないかと思います。
当然ながら当時の僕は本なんか、勉強も殆どしてないし、本も読んでなかったですから(笑)

たまには文学作品もいいものですね。これは本当に名作です。
齋藤孝氏や中田敦彦氏(オリエンタルラジオ)もおススメしています。