本がある日日

本は好きだが読書が苦手な男の読書ブログ。時々映画もあるよ。

何もかも憂鬱な夜に(中村文則)

中村文則氏の本は初めて読んだ。
読みやすい文章で長くはない小説だが、児童施設、死刑、刑務所、生と死などテーマは重い。

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 以前なんとなく憂鬱な気分の時にブックオフで購入して以来積読になっていた本だがようやく読めた。

読後感は決して憂鬱が晴れる内容ではない。人間失格を読んだ時のような気分になった。
それにしても、心や精神を持つ人間という生物は複雑だなとつくづく思う。
人間はというかこの地球上ではあらゆる環境がありそこで育った人は百人百様。けれど皆生きていかなきゃならない。
 
印象に残った文章

何かになりたい。何かになれば、自分は生きていける。そうすれば自分は自分として、そういう自信の中で、自分を保って生きていける。まだ、今の自分は、仮の姿だ。

 現在というのは、どんな過去にも勝る。そのアメーバとお前を繋ぐ無数の生き物の連続は、その何億年の線という、途方もない奇跡の連続は、いいか? 全て、今のお前のためにけにあった、と考えていい。