ぼくにはこれしかなかった。(早坂大輔)
盛岡市の新刊・古書店「BOOKNERD」の店主によるエッセイ。
働くってどういうことなのだろうか。今一度考えさせられる本だった。
会社員としてバリバリ働き、その後起業するも失敗。
夢を追いかけてきた著者はに残ったのは「小さな本屋」だった。
本には生きた証がある。そこには書いた人間の経験があり、よろこびと哀しみ、うつくしいたましいの遍歴がある。
本は人間が“考える葦”であることを証明するもっともたしかな道具だった。
本はぼくたちがもっと深い階段へ進むための足がかりになる。ぼくたちは過去からなにを学び、そして未来にはないが必要なのか。
本をこよなく愛する著者は40歳を過ぎたとき小さな街盛岡に「BOOKNERD」という本屋を作った。「本オタク」という意味だ。
開店当初は順調な滑り出しだったものの、数カ月経ったころから客足は減ってきた。
苦境の中、著者はこの店にしがみついて、自分の生き方を貫こうとする。
いつも逃げることを考えてきたが逃げ道はなかった。
これはぼくの好きなことで、この仕事がぼくにとっての生きがいになるものだったからだ。ぜったいに今回だけは僕は逃げるわけにはいかなかった。ぼくにはこれしかなかったのだから。
その後、様々な人との出会いがあったり、「わたしを空腹にしないほうがいい」(くどうれいん著)の出版(改訂版)を行うなど精力的にに活動している。
幾度も苦難を越え、自分の道に辿り着いたサクセスストーリーだ。
文章も読みやすくスラスラと読める。
本、映画、音楽など好きなんだなということが伝わってくるハートフルな温かい本でもあるように思う。
また、著者の仕事論もちりばめられている。どうやって仕事を選べば良いのか、どんな仕事に意味があるのかなどビジネス書、自己啓発書的な面もある。
要はきみにしかできない仕事かどうかということが重要だ。
なんびとも代替のできない、きみにしかできない仕事をみつけることには、たぶん人生を賭けてもいいはずだ。
自分の価値を社会に活かすということで自分が認められるという生き方の提案をしている。夢があってワクワクする文章だ。
一方で、世の中には「代替できる仕事」をコツコツと行っている人が世の中には大勢いることも忘れてはいけないと少し天邪鬼な感想も持った。
巻末にはなんと50冊ものお薦めの本が紹介してあるので(しかも写真付)得した気分になる。(僕が知っている本は殆どなかったが)