本がある日日

本は好きだが読書が苦手な男の読書ブログ。時々映画もあるよ。

いい人でも欲望に溺れたら人間失格してしまう【人間失格・太宰治】

前回に続き言わずもがな有名な一冊です。

この本も例の如く、生まれて初めて読みました(汗)太宰治作品も初めてという恥ずかしさ。

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発行部数は累計650万部超え。(夏目漱石の「こころ」は累計700万部超え)発表されたのが1948年(昭和23年)。72年前です。

この本はどちらかといえば短い小説ですが、何しろ人間の闇の部分、醜い面が詰まっていて、暗くなるとかネガティブになとか言われますが、僕は深く考えさせられた一方、『この本は読む人によってかなり感じることが違うだろうな』と思ったのです。

 <超おおまかなあらすじ>

この本を書く主人公と、その中の<手記>の主人公が存在します。手記は、「恥の多い生涯を送って来ました。」という有名な一文で始まります。

手記の主人公「葉蔵」は幼少期の人間不信、家族や人間への恐怖、(性的)虐待などから、自分を偽り誤魔化す「お道化」という技で生きていく。

高校へ入ってからは知り合った男友達と女、酒、左翼活動にはまり込む。

ある女と心中するが、葉蔵は生き延びて自殺ほう助で捕まる。その他数々の女と出会い、果てはアルコール中毒、ドラッグ中毒、狂人と化し精神病院へ入れられて人間失格と自覚する。

 

 <感想>

内容以前に言葉の使い方、選び方が絶妙で日本語ってこんなに表現豊かなのだと思わせられます。

さて内容といえば、酒、女、金、ドラッグ、自殺、姦淫、欺き、誤魔化し、人間の醜い部分がひたすら出てきますが、共感する人はどれだけいるのか。いや、共感する人が多いからこそここまで読まれ続けているのではないかとも思うのです。

僕は、葉蔵の幼少期に心境にどこか思い当たるような部分に触れました。何かを守るために偽る、誤魔化す。僕もこんなふうに思っていたなと思い出しました。

大人になってからの葉蔵はとにかく女にモテます。何人もの女に好かれて付き合います。
しかし、欲望に身を任せ、堕落する生活を繰り返しダメ人間になっていく。哀れとしかいいようが無い。

本当は「狂う素性」がだれにでもあるのではないかとも思うのです。それほど人間って脆いような気がしますが、先天性のものもあるかもしれませんが、育った環境、とりまく人間によるところも大きいでしょう。

よくよく考えてみると、狂人となった葉蔵は人を騙したり、危害を加えたり、凶悪犯のような行為はしていないのです。
そんな悪人でも無いのに欲望のままに生きると人間失格となってしまう物語と僕は思いました。

<手記>ではなく、<あとがき>に葉蔵は、〈神様みたいないい子でした〉と書かれてあるようにいい人なのです。でも人間失格になるのです。

ちなみに驚くのはこの小説が自伝的小説で、この作品を発表した年に太宰治自身が遂に本当に自殺してしまうということ。
このような奇怪な実話があるためリアリティを纏っているので支持されているのだろうかと思うのです。

誰にでもオススメできるかというとわかりませんが、人生に一度は読んでも良い本だと思います。
読むたびに感じる事が違うのではないか。そう思わせる一冊です。

 

人間失格 (新潮文庫)

人間失格 (新潮文庫)

  • 作者:太宰 治
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/01
  • メディア: 文庫
 
人間失格 (角川文庫)

人間失格 (角川文庫)

  • 作者:太宰 治
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2007/05/30
  • メディア: 文庫