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本は好きだが読書が苦手な男の読書ブログ。時々映画もあるよ。

【小説ブッダ ーいにしえの道、白い雲ー】ティク・ナット・ハン著

今年の正月に「手塚治虫ブッダ」を読み、もう少しきちんと書かれたブッダの生涯が書かれた本は無いのかと思い探していたところ、この本を見をつけたのですが、なんとも分厚い!

本文は416ページ、しかも文字が小さい。こんなボリュームの長編、読書が苦手な僕に果たして読めるのか、いささか不安もありました(笑)

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 著者と訳者

著者ティク・ナット・ハン氏は1926年ベトナム生まれの禅僧で、今現在も各国で布教や活動をされていて著書も多い。名前をよく目にする方ですが、堅めの本が多かったのでいままで敬遠していましたが今回初めて読んでみることに。

訳者の池田久代氏も仏教の勉強、修行をされていた方で、難しい本とおもいきや、文章は読みやすく訳されています。

 

全体的にどんな本か

あとがきにも書かれていますが、基本的に小乗仏教の経典からのエピソードを収集したものですが、大乗経典を採用していないのは大乗経典の思想が古い経典に含まれているという判断だからだそうです。

著者は小乗仏教大乗仏教も把握した上での選択だったようですね。

また、経典に出てくる「奇跡」は多く省いているようで、そこに違和感を感じる人もいるかもしれないですが、ブッダ自身「超自然的な力を獲得しようとして時間と労力を無駄にしないよう」に説いたという理由もあるようです。

経典ベースのエピソードとして全部で81章からなる内容は、このようなシチュエーションでこのように語られたんだろうなと思いを巡らせることができます。

壮大なこの本ではあらゆる人物が登場し、幾多の物語が紡がれ書き記されています。

本文は3部構成からなるのですが、12部は比較的ブッダの教えは少なめですが、3部では本格的に比丘やその他の人たちと仏法の説教や、質疑形式で会話される場面が多くあります。迫力のあるシーンもありますが、本格的すぎてで仏法が理解できないところも多々ありました・・・それくらいレベルは高いと思います(個人的に思う)

内容と感想

全体を通して読むとブッダという人物と仏法がかなりわかる本だと思います。
ブッダは悟りを開いた後、どのように比丘や庶民への説法は非常に巧みな会話で説いていきます。十二縁起、八正道、四念処、戒律、三宝、瞑想、慈悲、中道、不生不滅、空、無相、無願、サティ(気付き)など、苦や迷いから脱することができるのか、正しい道とはなにか、幸福とはなにか、すべて論理的に説明していきます。

後半、ブッダの弟子たちでも理解ができずブッダに詳しく問いただす場面もいくつか出てきます。そのような場面は読んでいる身からしてもリアリティがあり面白かったです。

個人的には〈空〉〈不生不滅〉の解説がかなり詳細に書かれていて良かったです。まだ完全に理解はできてませんが・・・とはいえ、最終的には頭で理解しても悟れないんですけどね。  

疑問がつきまとっていたのはあくまでこの本が〈小説〉だということです。経典がベースとはいえ、どこまで真実か、どこまでフィクションかはわかりかね、これは脚色してるんじゃないか?という場面もあります。

しかし、小説仕立てならではで、その時その時の環境でどのように話されたのかがわかったり、時にはブッダが語りかけているように思えたり感じたりすることができます。

ブッダの涅槃のシーンは詳細に描かれていて、弟子たちが別れを惜しむ心やブッダの残される弟子たちへの思いが強く伝わり、長い旅が終わる感覚がありました。

一方でこの時代の民族問題や戦争、階級社会については少ないのと(このあたりは手塚治虫ブッダのほうが多く描かれている)、長編なのは良いとして、次から次から出てくるエピソードは同じような流れが続き、単調な感じがして一冊の本としては途中間延びしている気もします。

長編なので一気に読むのは大変かもしれませんが、章が細かく分かれているので毎日少しずつ気長に読んでいくのも良いのではないでしょうか。

 

小説ブッダ―いにしえの道、白い雲

小説ブッダ―いにしえの道、白い雲